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 瀬戸だより 〜せとものについて話しませんか〜

112号 「何だって瀬戸物で作っていたんだ」という話
2008/07/26発行
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一見金属に見えますが、キャップも本体もすべてせともの。
時代は詳しくわかりませんが、箱も残っています。

 7月も終わりです。暑い日が続いています。瀬戸の町は山に囲まれて涼しそうなイメージですが、夏は蒸し暑くとても厳しい季節です。なにしろ昨年は山を挟んで隣の岐阜県多治見市が日本の最高気温の記録を塗り替えました。気候的には瀬戸だって似たようなものです、たぶん。

 8月になると終戦記念日など戦争の歴史を振り返ることが多くなります。瀬戸は戦時中は特別空襲などの大きな被害は受けなかったように聞きます。
 瀬戸で戦争を振り返るとき、必ず語られるのは「代用品」の話です。

 戦時中、鉄などの物資が不足したというのはよく聞きます。瀬戸ではその供出された鉄製品の代用品を多く生産していました。
 一番そのような資料が集められているのは、この「瀬戸だより」でも登場回数の多い「瀬戸蔵ミュージアム」です。3階展示室、瀬戸の窯業の歴史が土器の時代から現代にわたって時代に沿って展示されているコーナー。その現代に近い、展示の終わりの方に多くの代用品が展示されています。
 アイロン、ストーブ、鉄瓶、はかりの分銅など本来鉄で作られるのが当たり前のものが瀬戸物・陶器で作られています。鉄瓶やストーブなどは色や形体を鉄に似せて作ってあるようで、一見すると鉄のようにも見えてしまいます。あえて似せて作る‥‥鉄で作っていないという不安を少しでも減らそうという気持からでしょうか。

 うちのご先祖も当時は代用品を作っていたようで、本家のおじいさんからいただいた水筒が手元にあります。陶器でできた水筒ですが、色は銀色のペンキか何かで塗られています。これも「金属」をまねているようですね。よく売れたそうですが、子どもたちが空になった水筒を石投げの的にして割ってしまうという「欠点」もあったようです。

 ガスコンロも陶器で作られています。何かひびでも入ったらガスが漏れて怖いような気がします。でも、考えて見れば今も瀬戸にはガス機器の工場がいくつもあります。冬場、暖房に使うガスファンヒーターや石油ファンヒーターなどの実際に燃焼させるバーナー部分はセラミックで出来ています。つまりは広い意味での瀬戸物ということになりますね。これらが当時のコンロの技術からの発展なのかどうかはわかりませんが、今もそのパーツでは瀬戸の企業がかなりのシェアを持つという話も聞きます。
 展示ケースの中には手榴弾や地雷なども瀬戸物で作られ展示されています。実際、そのような武器として瀬戸物が本当に使われたのかはわかりませんが、本当に鉄で出来たあらゆるものを代用しようとしていたと感心します。
 最後にはお金(コイン)まで陶器で作る準備が進んでいたようです。陶貨というものです。終戦の頃には実際の制作が始まっていたようで、もう少し戦争が長引けば実際に流通していたのではないかと言われます。

 私たちは戦争を知らない世代です。戦場の悲惨さや原爆・空襲などテレビなどよく取り上げられて知る機会も多いのですが、比較的日々の生活の中でのこうした苦労を考える機会はあまり多くありません。
陶器のコンロの上に陶器のやかんを乗せてお湯を沸かす‥‥買い物は陶器のお金で‥‥日用品がすべて陶器でできている。最後には陶器の手榴弾を持って、陶器の地雷の間を駆け抜ける‥‥。そんな陶器の使われ方をする時代はいやですね。のんびりと趣味や生活の中で自由に陶器を楽しめる今の時代に感謝です。

 瀬戸市の深川神社近くに法雲寺というお寺があります。そこに代替として作られた陶製の梵鐘が今もあります。鉄で出来た鐘は打てば響くものですが、陶器の鐘はどんな音がするのでしょうか?たぶん音を出すという本来の鐘の目的というよりは、見た目の代替という意味合いが強いように感じます。金属の鐘を打つように陶製の鐘を打てば結果は想像できそうです。この鐘も時代を物語る大切な資料の一つですね。


法雲寺さんの陶製の鐘。境内にあります。

2008/07/26


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