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 瀬戸だより 〜せとものについて話しませんか〜

109号 「道具土とえんごろ」という話
2008/07/05発行
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窯垣の小径の駐車場。たくさんの「えんごろ」もあります。
中に入る製品の形・大きさによって様々な種類があります。

 7月に入りました。まだ梅雨は明けませんが、晴れた日は暑くなりますね。もう夏です。

 瀬戸で陶器づくりの盛んになった理由はいろいろとあります。
 歴史的には尾張藩の産業保護政策などもありますが、原材料的な部分から見れば、非常に良質な土に恵まれたのがまず一つ。きめ細かく、白い土はいろいろな用途に使えます。多少のアレンジを加えれば染付の素地として「磁器」的な使い方もできます。またその特性から、瀬戸では器のみでなくノベルティに代表される精巧な置物、タイル、便器など衛生陶器や碍子のような電器関連の工業製品までさまざまなものが生産されてきました。他産地の土と比べると非常に万能性のある土です(逆にいえば個性がないとも言えなくもない‥)。
 次に周囲が山に囲まれて燃料にする薪の入手が容易だったこと(しかし、幕末から明治にかけて窯業の発展とともに「はげ山」だらけになってしまったわけですが‥)。
 そして忘れがちですが、窯道具を作るのに利用する道具土も他産地に比べ豊富に産出したということも陶器づくりには有利でした。

 道具土は、耐火性に優れた焼締りの少ない土のことです。現在でも窯の中の支えや製品の下に薄い円盤状にしたものを敷たりして使ったりします(この用途では瀬戸では「より土」と呼ぶ人のほうが多いです。陶芸をされている人にはおなじみですね)。
かつてはこの土を使って棚板やツクも作られていました。今では薄く軽いカーボランダムの棚板が主流ですが、5センチ近くあるような分厚く重い棚板を使っていました。ツク(棚板を支える柱)も太い土の塊のような円柱でした。これを狭い窯の中で積み上げながらの窯詰めでしたから、昔の窯焼さんたちはたいへんな重労働だったことが想像できますね。
 そして燃料が薪・石炭の時代には焼成中に灰がかかってはいけない製品(たとえば染付など)は「えんごろ」と言うサヤ(甲鉢)にいれて窯入れされました。大切なせとものをひとつひとつをその大きさにあったケースに入れるわけです。これも道具土から作られるものです。
 えんごろは何度も窯で再利用されます。そしてその度ごとに、中のせとものを灰から守り、自らは灰を幾層もかぶり自然釉の美しい光沢を身にまとっていきます。薪窯の内壁が自然釉によってガラス質の美しい輝きを見せるのと同じですね。えんごろはその製品に合わせていろいろな大きさ・形があります。そのえんごろや棚板、ツクは役目を終えた後は瀬戸独特の窯垣の材料として再利用されたりしました。これは豊富な道具土・窯道具の利用から、用済みとなった大量の窯道具があったということです。なかなか他産地ではここまで贅沢に道具土・窯道具を使えなかったようです。一つの瀬戸の特色と言えるのでしょう。


窯垣の小径にて。ご飯茶碗の「えんごろ」。伏せておかれています。
内側はぴったりと茶碗が入る形です。効率良く重なります。

 えんごろは時代とともに変化していき、薪窯の灰からせとものを守るという役目より現在ではより効率よく窯詰めするための道具となっています。たとえば、茶碗には茶碗専用のえんごろがあり、茶碗がぴったりと収まり、けして触れ合わないように上下に隙間なく重ねられていく工夫がされています。あまりにぴったりサイズなので釉薬を掛けた半製品の茶碗をそのえんごろの中心にうまく収めていくのは、コツと言うか技術が必要になっています。指に糸をはさみ、それを茶碗の高台すぐ上の側面に這わせるようにして支えながらえんごろに入れて糸を抜く‥‥そんな風にして次々と茶碗をえんごろに詰めていく作業です。それを手伝う機会が以前ありましたが、もちろん上手にはいきませんでしたね。

 「えんごろ」という言葉は瀬戸の人にとって懐かしい響きをもっています。また、「大切な物を守る」というイメージを含んだ暖かな響きでもありますね。

2008/07/05


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