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 瀬戸だより 〜せとものについて話しませんか〜

021号 「灰釉は基本」という話
2006/10/28発行
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 今回は釉薬のお話。

 日本で最初の施釉された陶器の製産が始まったのが瀬戸といわれています。その瀬戸を代表する釉薬というと織部、黄瀬戸、志野、灰釉、鉄釉、古瀬戸、御深井の七つの釉といわれています。
それら瀬戸の釉薬はすべて灰釉がベースになっています。灰釉というのは、草木を燃やして作った灰を水簸したものに、(灰だけでは流れ過ぎるので)長石を混ぜて調整したものです。その灰釉に鉄や銅などの金属を混ぜたものが、いろいろな発色をする釉薬になります。

 灰釉というのは面白いもので、それが一体なにの灰であるかで、釉薬の発色や透明感など全く違ってきます。店主の学生時代のノートを見ると「イネ科(タケなど)の植物はケイ酸分が少ない」「柞灰は着色成分が少ない」「椿灰は乳濁に最適」などいろいろと書いてあります……ほとんど憶えていませんが……。今でも自然の灰にこだわっている作家さんは少なくありません。「織部にはこの灰でなくては……」という具合です。
 植物をしっかり燃やして灰にすると、体積はかなり小さくなります。ということは釉薬として使える量の灰を集めようとすると、かなりの量の藁なり木なりが必要になってきます。そのため瀬戸の窯屋さんでは、わりと最近まで薪で風呂を焚いていたところが多かったようです。自分の仕事に必要となる種類の木を集める、風呂を焚く、希望の灰を入手、というサイクルですね。自宅だけでは十分な量の灰が集まらない時は、他の家に頼むこともあったようです。しかし、その家がうっかり別の木を使ったりすると、釉の調子が変わってしまうので、すぐ分かってしまい「約束が違うよ」となったりしたと聞きます。
今でも作家さんの陶房では冬に薪ストーブをたまにみかけます。それも灰が目的かもしれませんね。

 灰の種類によっていろいろと性質は違いますが、ひとまず植物の灰ならば釉薬のベースになるわけです。例えば「日曜日のバーベキューの時に燃やした木炭の灰」でも水簸して、長石と混ぜればともかく釉薬になるわけです(性質とかは、さて置いて…ということですが)。趣味で陶芸をしている方、試してみると面白いですよ。十分な量を集めるためには、かなりバーベキューをしなければなりませんが……。
 さて、今の時代なかなか灰の材料の木も大量に(そして安価に)安定して入手できるわけでもありません。そこでそれぞれの灰の科学的に成分を分析して、それを別の原料で再現して使うというのも一般的です。そのためにはゼーゲル式というものが便利です。 学生時代は調材実習ではほとんどこの計算ばかりしていた思い出があります。(ゼーゲル式はいろいろな参考書も出ているので、興味のある方はぜひ一冊読んでみて下さい)
 もちろん釉薬屋さん・原料屋さんで「合成××灰」という形で入手することもできます。ゼーゲル式を利用すればいろいろな灰の成分は再現できます。しかし、合成した材料には本来の灰に含まれる微量成分までは再現がむずかしく、その辺りが及ぼす釉の微妙な風合を求めるとなると、やはり天然の灰にこだわることになると思います。いつも同じものを必要な量入手できるという安定性では「合成××灰」のほうが有利ですね。

2006/10/28


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